権威勾配とマネジメントに関する話題:メーデー民的には「無理だろ、それ」
最近、権威勾配とマネジメントに関する話題が盛り上がっている。
権威勾配は航空事故の安全管理の話でちょくちょく出てくるので、航空事故調査ドキュメンタリー「メーデー!」愛好家の僕としても、これはコメントせねばな、と思った。
【参考リンク】
- 心理的安全性ガイドライン(あるいは権威勾配に関する一考察) – Qiita
- 「階層がないフラットな組織」より「階層があり、社員が自分の役割を越えて動き回る組織」のほうが強い説、を考える。|面白法人カヤック 人事部|note
メーデー!とは
航空事故に焦点を当て、事故調査報告書を基準に、当時の目撃情報、マスコミの報道なども踏まえて、当時の事故状況を解明し、再現するドキュメンタリー番組。
残骸のセット、事故調査中の再現ドラマでは当時使われていたコンピュータを使う、など、非常にリアリティの高いドラマが特徴。
昔、ニコニコにチャンネルがあって一挙放送なども行われたため、「メーデー民」という愛好家がニコ厨を中心に存在する。
今、日本語吹き替え版はCSでチャンネル契約するか、ネットのhuluでしか見られない。(DVDも販売されていない)
有名な「権威勾配」が原因とされた航空事故:大韓航空のイギリスでの墜落事故(1999年)
割と最近の話なのが驚きだ。
整備士のミスにより、計器の異常が発生し、機長が異常を告げた航空機関士の助言を全く聞かず、そのまま墜落した事故。
この時、副操縦士も終始無言だった。(おそらく、異常は感知していただろうにも関わらず)
その要因として、離陸前に機長が体育会系的指導である罵倒を副操縦士に浴びせており、それがきっかけで意思疎通が困難だったのではないか、と思われた。
これは韓国(だけに限らないが)のパイロットに空軍出身が多く、軍時代の階級をそのまま持ち込む傾向が強かったから、とも言われている。また、追跡調査ですでにパイロットの訓練の時期から、こうした軍の上下関係が持ち込まれていることが発覚した。
その後の韓国の対応
実はかなり重要な事件で、これを受け大韓航空はナショナルフラッグであるにも関わらず、安全面を問題視されアメリカで航空機のカテゴリーの格下げを受けた。
これがきっかけとなり、韓国の運輸大臣が引責辞任。大韓航空は海外の航空会社から役員を招聘し、抜本的な改革を実行することになったのである。
(なお、それ以降は、墜落なし)
教訓として
機長は「機長としての役割を表す名称」でしかなく、権威的マウントを取るものではない。副操縦士はアドバイザーである。
権威勾配の議論を通常のビジネスに利用できない理由
さて、これら権威勾配に関する問題を通常のビジネスに当てはめられるだろうか、いや、ほぼ無理だろう。
理由はただ一つで、「人事評価は上司が関係している」から。権威勾配は必ず高い状態で発生する。
僕も非正規時代にこれで雇止めになった経験があるわ。
そして2~3名(通常2名)で構成される航空機のパイロットとは違い、10名、それ以上の組織で「上司は一切、部下の評価に関与できない状態にする」ことが生産性を考慮した上で効率的かどうか、疑問が残る。
階層ありだとして、有事に階層を越境して動くのもリスク
よほどの問題でない限り、問題を完全解決したとしても「あなたの評価」は下がります。そもそも本当に「有事」かどうかの最終判断を勝手に下せるのだろうか?
そして、越境して動くことが許される組織環境の場合、大抵の場合「とりあえず何かとマウントだけは取りがちな、偉そうな人」が、越境して「有事」をでっち上げ、社内政治と派閥争いが発生しやすくなるので、組織としてどうかと。
これは常に権威勾配がフラットに近い状態でも発生します。
最後に:安全は非生産的だから生産性議論とは噛み合わない
航空事故の場合、「万が一の事故が発生した場合の損害が、災害規模になる」ので、効率性より、確実・慎重な判断が「平時」でも必要となる。
何があってもいいように利益より安全が常に優先される航空事故関連のマネジメントが、生産性議論に活きるだろうか?
(長い目で見れば生きるかもしれないが、多くの場合、それを求めるのは徒労に終わる気がする)
簡単に言ってしまえばこうした権威勾配に関する議論は、本当に万が一の有事を想定された保守に対して運用リソースを適切に注ぎ込むレベルでは有効でも、普段の効率的な生産性には、噛み合わないんじゃないかと思った。
それでは部下の解雇権を直接持つケースが多いアメリカの企業は、生産性が低いのどうか考えれば分かると思う。(有事:特に客に対してのミスした時のサポート対応は悪そうな予感はするけども)
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