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ムガベ大統領退任と経済学者の無益な一般書

2019-09-09その他社会の考察・雑感など,社会・政治・経済

ムガベ大統領退任記念に一筆。じっくり書く時間がなかったので、少し時期をはずしてしまった。

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ジンバブエドルと経済学者「クルーグマン」の言説の関係、経済学者への不信感について

ジンバブエと聞くと、ネットでネタにもなっているムガベ大統領の失政によるジンバブエドルのハイパーインフレーションの話が思い浮かぶ。

しかし、そんなジンバブエもその前ではムガベ大統領主導の下、「ジンバブエの奇跡」と呼ばれるほど「経済」「教育水準」「医療」など、国家の目標を劇的に改善した国でもあった。

ちょっと思い出したので書きたいと思う。

 

ジンバブエの奇跡から経済崩壊まで

ムガベ大統領は、自身が大統領に就任して約20年ぐらいは白人との融和に努め、むしろ逆にイギリスを中心とする欧米マーケットに自国の主力産業の農業製品を輸出することで、安定した経済、それに伴う自国の教育水準や医療など、インフラの向上に努め、「ジンバブエの奇跡」「アフリカがモデルとすべき理想的黒人国家」まで呼ばれるような成長を実現する。

現在、ジンバブエの経済が崩壊した理由として

コンゴ紛争に手を出したことで、経済が疲弊し、そこから(2000年)は自身の非難を回避するため、主力産業である白人主導の農園接収を行い、自国経済を滅ぼす結果になった。

というのが、挙げられている。

以後は、国民への圧政が目立つようになる。外国人記者に対しても入国禁止など、情報の統制も行っていた。(ちなみに、ちょうどそのころ、雑誌「News week」で掲載されていた、記者によるジンバブエ潜入記は非常に興味深く面白かった。「牧師さんが配給すべき食糧を一部横領して闇市に流して儲けてた。ランド(南アフリカ通貨)で」とか)

ノーベル経済学賞受賞学者「ポール・クルーグマン」の言説

個人的に2008年に国際貿易、金の流れの研究でノーベル経済学賞を受賞した学者「ポール・クルーグマン」の1998年の一般向け著書に注目したい。

和訳され「グローバル経済を動かす愚かな人々」というタイトルで日本にも流通している。経済学者らしい一般向け著書なだけあって、非常に扇情的なタイトルである。

この中で、1ページだけ、ジンバブエの奇跡に関する言及がある。ジンバブエは例に挙げられただけで、主題は次の見出しの通りである

グローバリゼーション内の、低賃金等の劣悪労働に反対する独善は正当化されない

この本の第三部「低賃金労働への称賛-劣悪な低賃金でも仕事がないよりまし-」より。

「私がグローバリゼーションの進展の具体例としてよく挙げるのが最近急増しているジンバブエの野菜輸出である」

出典「グローバル経済を動かす愚かな人々」

から始まるこの項目は最後、次の皮肉めいた言説により締めくくられる。

ああ、労働者は黒人である。イギリスの顧客が白人ばかりか、彼らを雇用するのも独立後ジンバブエに留まった、植民地時代に移住してたきた白人たちである。

出典「グローバル経済を動かす愚かな人々」

この本が出たのは1998年、ムガベ大統領が白人農園接収を行うのが2000年。

本当に影響を及ぼしたかどうかは定かではないが、疑われてもしかたがないのではないか。そもそもムガベ大統領の学位は理学修士(経済学専攻)である。

経済学者は一般向けに本を出すと、途端に、ただの評論家レベルになる法則

おそらく、経済学者の言説が国を滅ぼした、というと彼らは「お前、それ冗談じゃね?」という反応を返すだろう。

当然だと思う。しかし、そうならば、「学者」という称号を用いて「政治はこうすべきだ」「世界はこうあるべきだ」と扇情な一般書を出すのは止めるべきだと思う。

たとえば、1990年から2000年前半では、こういった論説が主流だったけど、今、この本とまったく同じものを出せるだろうか?

現代の例:フェアトレードが注目を浴びる

現代はそのグローバリゼーションの代表的な企業の一つAppleが工場での劣悪労働環境の報道を受け「サプライヤー行動規範」なるものが作成されたし、2000年代後半は一般向け経済学者著書でも「フェアトレード」という言葉が注目を浴びる社会になった。

このように世界は、大体10~20年間隔で相反する経済学者達の言説が脚光を浴び、それを繰り返している。正直僕の意見を言わせてもらえば、学者の小遣い稼ぎに、世間は右往左往しているようにしか見えない。

もっとも、よく考えもせずに学者の小遣い稼ぎの一般書に扇動され、安易に決定を下す頭の悪い政治家が悪い、というのも一理ある。

日本の例:派遣問題

話題はそれるが、日本でも経済学者が閣僚だった時代がある。日本では経済学者「竹中平蔵」が閣僚の時に、この新派遣法が制定、拡大された。で、この結果、現代はどうなっておりますよ、という話。

1990年主流だった学者達の言説は、彼らの意図は別として、結果的には、貧困を是として撒き散らすこととなった、世界的に。

その続きとして貧困対策として「ベーシックインカム」(最低限の所得を保証する)という制度が世界的に話題になったり実験されたりするのは皮肉だね。

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最後に:経済学は単一学部としては消え行く学問だと思う

「グローバル経済を動かす愚かな人々」の最後が未来予測についてだったので、こちらも未来予測をすると、見出しの通りである。

もう既に国政や金融政策に関する金の流れや、それに伴う影響の研究は結論が出てしまい、今は企業や人の行動分析がメインの研究も多くなった。

そして、経済学は下記の特性があるため、おそらくはいずれ消滅するだろうと思う。

・学派が多く、各言説も真逆であり、お互いに批判的である

このため、1学問として、まとまりのある学部への吸収が進むと思う。

国政や金融政策などの従来の経済学は「政治学」の1学問として吸収され、理論や数量、統計の部類は理系分野の学問(そもそもこの分野の発見はその他の理系学者も多い)に、企業や組織活動、人の行動に関するものは「経営学」「社会学」にそれぞれ吸収され、「経済学」は1学部として体を成さなくなってくる。

そうなると、一般著書やメディア進出する際も「経営学」で「経済学を専門に扱う」学者というような形の肩書きとなる。

実は、経済学の世界もそれを感じていて、自身のポジションを守るため、今の時流にあった言説をチョイス、一般向けにアピールしてるのかもしれないね、と僕はオカルトチックに妄想するのである。

とかく、経営学者の「政治は、世界はこうあるべき」ほど無責任で正義もなく、かつ実行成果もなく犠牲者しか出ないものも珍しい。

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